公務員の副業は将来どこまで解禁される?【元公務員が予測する】

近年民間では副業を許容している企業が増えているけど、公務員はどうなの?
公務員では将来的にはどこまで副業は解禁されるんだろう。

今回は、そんな疑問を解消する記事を書いていきます。

コロナの影響もあってか民間企業では副業を推進する動きがみられています。

一方で、公務員はというと副業についてはまだまだ制限されています。

そこで今回は、公務員の事情を知る私が将来的にどこまで副業が解禁されるのか予想をしていきたいと思います。

現在公務員の副業はどこまで許されている?

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・国家公務員地方公務員ともに、営利を目的とする企業に従事してはダメ。
・また、自ら営利企業を営むのもダメ。
・許可がある場合は副業しても大丈夫な場合もあるよ。

現在公務員の副業については、簡単に表現すると上記のような考えになっています。

営利企業に務めることも自分で開くこともダメです。

要はほとんど収入アップにつながるような副業はできないのです。

公務員の副業は法律によって制限されている

公務員の副業については、しっかり法律に規定されています。

国家公務員と地方公務員ともにそれぞれ別々の法律があり、それが「国家公務員法」と「地方公務員法」になります。

国家公務員法による副業規定

国家公務員の副業に関しては、国家公務員法の第103条及び第104条に規定されています。

第103条

職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。

国家公務員法 https://www.town.shibata.miyagi.jp/reiki_int/reiki_honbun/0500100004170331h.html

第104条

職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。

国家公務員法 https://www.town.shibata.miyagi.jp/reiki_int/reiki_honbun/0500100004170331h.html

以上を簡単に要約すると、

・営利を目的とする企業の役員になっちゃいけませんよ。
・もちろん自分で営利を目的としてやるのもダメ。
・ただ、許可があれば可能となる場合があるよ。


といった感じになります。

地方公務員法による副業規定

地方公務員の副業に関しては、地方公務員法の第38条に規定されています。

第38条

1職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。

2人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。

地方公務員法

以上を簡単に要約すると、

・許可がなければ営利を目的とする企業の役員になっちゃいけませんよ。
・もちろん自分で営利を目的としてやるのもダメ。


といった感じになります。

そもそもなぜ、副業禁止なのか(公務員の3つの原則)

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上記のように公務員の副業は制限されていますが、これは次の3つの原則によります。

  • 信用失墜行為の禁止(国公法第99条)
    ⇒公務員のイメージを壊す・信用を無くすことはしてはいけませんよ。
  • 守秘義務(国公法第100条)
    ⇒公務員で知りえた個人情報や機密情報等を外部に漏らしちゃだめですよ。
  • 職務専念の義務(国公法第101条)
    ⇒公務員の仕事に集中してくださいよ。

もちろん上記の3つの原則もしっかり法律で規定されています。

副業は、これらの原則を犯す可能性があるため制限されることになります。

現在公務員でもできる副業は?

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法律によっている制限されている副業ですが、公務員でもできる副業はどんなものがあるのでしょうか?

公務員の副業では、「許可なしでできるもの」「許可が必要なもの」があります。

許可なしでできる副業

  • 株式投資、FX、暗号資産(仮想通貨)などの投資
  • 家業の手伝い
  • 不動産経営(※小規模の場合は許可不要)
  • 太陽光発電(※10kW未満)
  • 農業(※大規模農業の場合は兼業不可)

上記の副業は、許可なしで行うことはできます。

しかし、上記で上げた株式・FX投資以外の副業は条件があります。
この条件が結構曖昧であり、とくに農業の場合は条件次第では許可が必要になります。

許可が必要な副業

・講演、講師
・執筆活動

・公益的活動

これらの3つは、正当な理由があれば許可が出やすく公務員でもできる副業になります。

地方公務員では副業解禁の先進的な取り組みをしている自治体も

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地方公務員の中には、副業の解禁に向けて先進的な取り組みをしている自治体があります。

  • 兵庫県神戸市
  • 奈良県生駒市

この2つの市は2017年より先進的な取り組みをしています。

(地域貢献応援制度)

市の職員が、職員として培った知識・経験等を活かして、市民の立場で地域における課題解決に積極的に取り組めるよう、その後押しをすることを目的として、営利企業への従事等のうち社会性・公益性の高い継続的な地域貢献活動に、報酬を得て従事する場合の取扱いを定めたものです。

引用:人材育成・人事制度・働き方改革 | 神戸市:職員採用ページ

生駒市では、職員の地域活動への積極的参加を促進し、公共性のある組織で副業に就きやすくするため、職員が職務外に報酬を得て地域活動に従事する際の基準(運用)を定めました。運用は、平成29年8月1日より開始しています。

より一層厳しい自治体経営が予測される少子高齢化時代にあって、持続可能なまちづくりを進めていくためには、市民と行政が互いの立場を認識し、自覚と責任を持ってそれぞれが役割を担い、協働しながら地域課題を解決していくことが必要です。しかし、公務員という職業柄から報酬等の受け取りに抵抗があり、NPO活動や子どもたちへのスポーツ指導などの地域活動への参加を妨げる一因となっていました。

この明確化により、職員が地域活動に励み、市民との参画や協働によるまちづくりがより一層活発になることを目指します。

引用:生駒市ホームページ

簡単に説明しますと、「営利企業であっても公益性の高い地域貢献活動であれば報酬を得ても問題ないですよ」といった感じになります。

この2つの市では、条件付きではあるものの営利企業への従事が認められています。

公務員の副業解禁は将来どうなる?

分かれ道

公務員の副業は将来的には、神戸市や生駒市のように条件付きで営利企業への従事を認める自治体は増えてくると思います。

とはいえ、収入アップを目的とした副業が完全に解禁されることはしばらくはないと思います。

その理由は次の3点です。

・情報漏えいのリスク
・制度改正が必要だから
・結局は公務員だから

情報漏えいのリスク

現在は個人でもブログやYouTubeなどを通して簡単に情報を発信できる時代です。

その分、情報漏えいのリスクも出てきます。

そうすると、「信用失墜行為の禁止」「守秘義務」に反することになりますよね。

そのため、リスクを犯してまで副業を完全に解禁することはないと思います。

また、許可制にしてもそれを誰がチェックするのかなど決め事も多くなってきます。

その点からも、しばらくは副業完全解禁はできないと思います。

制度改正が必要だから

公務員の副業は先述した通り法律によって制限されており、完全に解禁するためにはこの制度そのものを改正する必要があります。

おそらくこの制度改正はしばらくされることはないでしょう。

これは実際に国家公務員の副業について議論された際も「制度改正」には踏み込んでいないことからも明らかです。

その際は、現行制度の「報酬」という部分を「公益的活動等に伴って社会通念上妥当とされる範囲の報酬を得る」と解釈することで公益的活動に限って副業ができるようになりました。

神戸市や生駒市の例についても、現行制度内で解釈の仕方の変更でできるようになったにすぎません。

そのため、今後もしばらくは現行制度の下でできる副業しかできないと予想されます。

結局は公務員だから

「結局は公務員だから」これは大きな要因にもなると思います。

というのも、市民の反発に合うと予想されるから。

市民からしたら税金も払っているし、公務員の仕事に集中してほしいというのが本音ですよね。

民意を無視するような制度改正は容易にはできないと思います。

(まとめ)とはいえ副業が当たり前の時代になりつつある

収入を増やすという意味での副業が公務員に解禁されることは今後しばらくないでしょう。

とはいえ、時代としては全体的に副業解禁の方向に動いています

公務員だから副業が制限されるということ自体無理が出てくると思います。

そのため、長期的には解禁せざるを得なくなってくるでしょう。

その時代に備えて、いまから準備することは大切かもしれません。

副業解禁されてからヨーイドンで始めても遅いと思います。

なんせ現状ですでに民間企業に後れを取っているのだから。